建設業の許可を取得するためには5つの要件があります。
それぞれどのような要件なのかを判りやすくご説明したいと思います。
建設工事の種類
建設工事には29種類の工事のがあり、それぞれ工事に対しての許可を取得しなければいけません。
一式工事とは、「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事」が該当します。
つまり、一式工事業は規模が大きかったり、複雑な工事での元請となる事業者向けの許可区分であるといえます。
一式工事は全ての工事を含んでいるという意味ではありませんので、一式工事業のみの許可では専門工事を請け負うことはできません。
専門工事を行う場合は専門工事の許可が必要になります。
それでは、建設業の許可に必要な5つの要件を見てみましょう。
経営業務の管理責任者がいること
「法人の場合、常勤役員の1人、個人事業主の場合は本人又は支配人が、建設業に関して一定の経営経験を有していること」が要件となります。
この「一定の経営経験」には3つの種類の経験があります。
それでは1つづつご説明したいと思います。
5年経験
許可を受けようとしている建設業に関して5年以上の経験をもっている場合は経営業務の管理責任者になれます。
上図にあります29種類の工事に関して、法人役員又は個人事業主本人又は支配人等の経営経験が5年あれば要件を満たすことが出来ます。
例えば、大工工事の経営経験が5年あれば、大工工事業の経営業務の管理責任者になることができます。
ただし、大工工事しかおこなっていなかった場合は、5年間での経営経験では、大工工事以外の工事の許可要件を満たすことは出来ません。
6年経験
大工工事の経営経験しかない人が他の工事の経営業務の管理責任者になるには、どうすればいいのでしょうか。
29種類全ての工事で5年以上の経営経験が必要になるのでしょうか。
許可を受けようとする建設業以外の建設業に関しては、6年以上の経営経験があれば要件を満たすことが出来ます。
例えば、大工工事で6年以上の経営経験があれば、29種類全ての経営業務責任者になることができます。
6年の経営経験は、いくつかの工事の経営経験の合算でも認められます。
大工工事3年、電気工事2年、建築一式工事1年のような場合でも6年の経営経験として認められます。
但し、以下にご説明します「準ずる地位」の場合は合算しての6年の経験は認められませんのでご注意下さい。
経営業務の管理責任者に準ずる地位
経営業務の管理責任者に準ずる地位とは、経営者を補佐するような立場の人を言います。
この場合、経験してきたものとは別の工事の経営業務の管理責任者になることはできません。
例えば大工工事の会社で経営者の下の準ずる地位を6年以上経験していても、電気工事の経営業務の管理責任者にはなれません。
さらに、「経営業務の管理責任者に準ずる地位」にあったかという認定が行政によって大きく異なりますので、必ず行政窓口に相談に行って、経営業務の管理責任者となる人の経歴が「経営業務の管理責任者に準ずる地位」として認められるかの確認をする必要があります。
専任技術者がいること
専任技術者とは、特定の資格や一定の実務経験があり、営業所に常勤して業務に従事する人です。
資格や実務経験といった要件と、営業所ごとに必要になるという点がポイントです。
また、一般建設業許可と特定建設業許可で専任技術者になる条件がことなります。
それでは、専任技術者になるための要件をみてみましょう。
一般建設業許可の専任技術者
一般建設業の専任技術者になるには以下にあげるいずれかの要件を満たす必要があります。
国家資格等
一般建設業の専任技術者になることが出来る資格は、下のリンク先にある表で「○」がついている資格です。
実務経験
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験が必要です。
専任技術者の場合、経営業務の管理責任者とは違って、許可を受けようとする建設業の実務経験のみしか認められません。
例えば、電気工事で20年の実務経験があったとしても、大工工事の専任技術者にはなれません。
学歴+実務経験
指定の学科を修了して、一定の実務経験を持つ場合にも一般建設業の専任技術者の要件を満たすことができます。
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、高校卒業後5年以上若しくは大学卒業後3年以上の実務経験を有し、かつ、それぞれ在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後5年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後3年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者のうち、専門士又は高度専門士を称する者
特定建設業許可の専任技術者
それでは次に特定建設業許可の専任技術者の要件を見てみましょう。
国家資格等
特定建設業の専任技術者になることが出来る資格は、下のリンク先にある表で「◎」がついている資格です。
一般建設業専任技術者要件+指導監督的実務経験
一般建設業の要件を満たし、かつ、許可を受けようとする建設業種において、元請として4500万円以上の工事を2年以上指導監督した経験を有する場合、特定建設業の専任技術者の要件を満たすことが出来ます。
指導監督的経験とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような資格で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。
財産的基礎があること
建設業の許可をとるためには最低限の資金を確保できることが要件となっています。
財産的基礎も一般建設業と特定建設業で要件が異なります。
一般建設業
一般建設業の場合、以下のいずれかに該当することが要件とされています。
例えば直前の決算期の財務諸表で自己資本額が500万円以上であれば、500万円以上の資金調達能力の証明は必要ありません。
- 直前の決算において、自己資本額が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力を証明できること(預金残高証明書の提出)
- 500万円以上の資金調達能力を証明できること(融資可能証明書の提出)
- 直前過去5年間許可を受けて継続して建設業を営業した実績
特定建設業
特定建設業の場合、以下の全てに該当する必要があります。
- 欠損の額が資本金の額の20%以下であること(欠損金÷資本金×100≦20%)
- 流動比率が75%以上であること(流動資産÷流動負債×100≧75%)
- 資本金の額が2000万円以上であること
- 自己資本の額が4000万円以上であること
誠実性があること
許可を受けようとする人が、「法人」の場合は当該法人、その役員、政令で定める使用人(令3条に規定する使用人)が、「個人」の場合はその者、政令で定める使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要です。
※「不正な行為」とは、請負契約の締結、履行の際に詐欺、脅迫、横領など法律に違反する行為をいいます。
※「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、損害の負担などについて契約に違反する行為をいいます。
欠格要件に該当しないこと
建設業法8条で過去に免許取消処分をされて一定期間が過ぎていない者や営業停止期間中の者など、建設業の許可を取得できない要件を記しています。
過去に違法行為を行ったことがある人などは注意が必要です。
建設業許可申請チェックシート
まとめ
いかがでしたでしょうか。
思っていたよりも要件が多くて大変だと思われた人も多いのではないでしょうか。
特に経営業務の管理責任者と専任技術者の要件を満たすことが出来ずに許可取得を断念されるケースが多くあります。
実務経験の証明が難しい場合など、お困りの際には是非当センターにご相談下さい。